ニューバランス フューエルセル スーパーコンプトレーナー V2を履いて走ってみた

ニューバランス フューエルセル スーパーコンプトレーナー V2を履いて走ってみた

画像:筆者私物

こんにちは。

今回の記事ではFuelCell Super CompTrainer V2のシューズレビューを行わせていただきます。

最後のレビューを行ったニューバランスのシューズはFuelCell Rebel V2でしたが、本日までに同社のランニングシューズを複数足履いてましたので、それらとの比較も交えて解説していければと思います。

とても履きやすくて気に入っていたFuelCell Rebel V2のシューズレビューはこちらからどうぞ。

初代 FuelCell SuperComp (SC) Trainer V1について

SuperCompシリーズのカーボンプレート内臓の超厚底デイリートレーナ―

ニューバランスのSuperComp (SC)の現在のラインナップは、Trainerの他、長距離レース用のElite、短距離レース・テンポラン用のPacerが用意されています。いずれもFuelCellミッドソールにカーボンファイバープレートが搭載されています。

こちらはSC Elite V3のミッドソールの分解図。
画像引用元: Newbalance.com

現在のSCシリーズの登場は2022年のコレクションからで、当時はPacerとTrainerのみがラインナップされていました。SC Trainer V1は国際陸連が定める公式大会におけるミッドソールの厚み上限40㎜を超える超厚底ミッドソールに、カーボンファイバープレートを搭載したボリューミーなランニングシューズとして登場しました。

SuperComp Trainer V1
画像引用元: newbalance.jp

SuperComp Trainer V1を絶賛する声がある一方・・・


いくつかのレビューを拝見したところ、その賛否は分かれているように思われました。ポジティブな意見としては、デイリーランからフルマラソンのレース用に使うことができる万能性が賞賛されており、最もお気に入りのシューズであると語っているレビュアーもちらほら。また、カーボンファイバープレートを内臓していることもあり、ある程度のスピードのテンポランにも対応できるとのことでした。

一方で、ネガティブな意見としては、ミッドソールのかかと部分の厚みは47mmと大変分厚く、また重量も27.0cmで300g近い重さとレース用としては重量級のため、スピードを出したトレーニングやレースには向かない。また、かかと部分のアッパーデザインが特殊で、かかとが抜ける感覚があるなどが見受けられました。

Run Like HellerのEmilyはマラソンレース用シューズとしてSC Trainer V1を選んでいた模様。イージーペースからスピードランまでカバーしてくれて、疲れてきた時もスピードに乗れる感覚があるとのこと。ただ、シューズに使われている材質がかなり臭いらしい。

一方、2023年の東京マラソンの際に来日したKofuziは、Emilyとのコラボ動画において、過大評価されているシューズとして、SC Trainer V1をメンションしていました。

42:10あたりからSC Trainer V1の話をしています。東京マラソンでサブ3を達成した彼によると、ミッドソールの沈み込みによって、前足部のカーボンプレートに張り付けられたゴムパットに着地しているような感覚になってきてしまい、不快なのだとか。

とはいえ、サブ3というと私にとっては夢のまた夢。走力・脚力で格段に劣る私が彼のような点で悩むようなことはないのではないかと思っています。
それよりも、Emilyや他の多くのレビュワーが語っているようなデイリートレーナ―のようなやさしいクッショニングと安定感がありながら、レースにも対応する推進力もあるという万能性に魅力を感じることになりました。

余談ですが、1970年代に同社から登場したロード/トラック兼用レーシングシューズにSuperCompの名が冠されていました。現行のシリーズのルーツは当時のシューズにあるのかもしれません。

画像引用元:thedeffest.com

初代のクセを修正し、アップデートされたSC Trainer V2

スタックハイトとFuelCellの密度を調整し軽量化を達成

ここからは今回購入したFuelCell SuperComp Trainer V2の画像と共にスペックを見ていきます。

画像:筆者私物

V2ではミッドソールかかと部の厚みを初代から7mm薄くし、40㎜としています。薄くなったと言えど、しっかりとボリュームのある見た目です。また、初代と比べてFuelCellの密度が下がっており、V1よりも20g以上の軽量化が図られています。ドロップは6㎜となり、シューズ前後の高低差も前作より緩やかになっています。
メッシュ素材で仕上げられたシームレスアッパーの側面を覆う樹脂製のドットはアッパーの補強の機能を担っているように思われます。アッパーの大部分が一層構造のメッシュとなっており、通気性も高そう。

画像の黒ベースのカラーの他、オレンジ色を基調としたカラーリングも販売されていました。ネット上で白基調のカラーリングも見ましたが、販売店では黒、オレンジのみが並んでいました。

画像:筆者私物

シューズ内側には “new balance” の文字がでかでかとプリントされています。蛍光カラーの差し色が好みですし、デザイン自体もなかなか素敵なデザインだと思っています。
V1のときと異なり、アッパーのかかと周りのデザインもスタンダードなものとなり、適度にパディングが配されています。店頭にて一番足首寄りのシューレースホールには紐を通さず試着しましたが、かかとが浮く感覚はほぼありませんでした。
ミッドソールに“ENERGY ARC”の文字がありますが、これは靴底中心部に空洞を設けたFuelCellミッドソールと、そこに内蔵されたカーボンファイバープレートを挟み込んだNewbalance独自のミッドソール構造のことを指しています。

画像:筆者私物

アウトソールは、前述のENERGY ARC構造によるミッドソール中心部の空洞が印象的です。これによって着地時の衝撃吸収性能と、踏切時の反発弾性能を高めているのだとか。空洞部分からカーボンファイバープレートを視認できます。

アウトソールは底面の外周を巡るように配されており、ミッドソールが部分的に露出してアウトソールを兼任するデザイン。
前足部の空洞部分には、カーボンファイバープレートに直接貼り付ける形で、蛍光色のラバーが配されています。画像ではわかりにくいのですが、この蛍光色のパ―ツは周囲のアウトソールと比べて足裏に近い位置に収まっており、強く踏み込んだ時か、ミッドソールがヘタってこない限り路面に接触することはあまり無いと思われます。このパーツはトラクションの確保というよりは、カーボンファイバープレートを保護する目的もあるのではないかと想像しています。

試着時の感想としてはふかふかとした非常に快適な履き心地。ソールの厚みについては、普段からFreshFoam More V4のようなボリュームのあるシューズを履いてランニングをしているため、そこまで違和感はありませんでした。

画像:筆者私物

画像左からFreshFoam More V4、SC Trainer V2、そしてFuelCell RC Elite V2 (District Vision) です。これまで両端の2足を履きまわしていたのですが、これからはこの3足でローテーションしていく予定です。
RC Elite V2に関しても厚底ランニングシューズという位置付けのはずですが、こうして超厚底の2足と比べてみるとロープロファイルでコンパクトなシューズの印象があります。

FuelCell SuperComp Trainer V2を履いて走ってみた。

ということで、SC Trainer V2を履いて何度か走ってみました。

合計で9km弱走行。序盤はかなりのスローペースで走り、後半からは少しスピードを上げました。猛暑日のせいにしたいところですが、FuelCell Rebel V2のレビュー記事の時と比べて全然スピードが出ておらず、少々凹みました。

快適なクッション性と反発を提供する極厚FuelCellミッドソール

前半は7分台、6分台とスローペースで走りました。分厚いFuelCellミッドソールがしっかりと潰れて、反発してくれる感触がありました。また、アウトソールの接地面が横に幅広なこともあってか、分厚いミッドソールながらある程度安定性も担保されている気がします。

左からFreshFoam More V4、SC Trainer V2、RC Elite V2。
画像:筆者私物

上の画像を見ていただくとお分かりの通り、SC Trainer V2のアウトソールは、ロングランやリカバリーラン向けとして評価の高いFreshForm More V4のアウトソールの横幅と比べても遜色ないぐらい幅広。どこで着地してもスムーズに次の一歩に誘導してくれる感覚がありました。

ただ、これぐらいの速度だとあまりカーボンプレートの恩恵は感じることは難しいかもしれません。

(おそらく)ある程度のスピード走もこなす優れもの

後半は5分前後~5分20秒程度のスピードで走行していました。この程度のペースでスピード走とは申し上げられないですが、少なくとも私の中でちょっと頑張ってスピードを出した走行にはしっかり対応してくれました。着地時の足への優しさは残しつつ、スローペースで走っていた時よりも鋭い反発力を感じました。FuelCell自体の反発力しかり、スローペース時よりも強く踏み切ることにより、カーボンプレートの恩恵も受けられるようになってくる印象です。

とはいえ、RC Elite V2などのレース用のシューズに比べると重量もありますし、それらに比べるとスピードの出し易さは当然に劣っていると感じました。冒頭でレースにも使えるシューズということでSC Trainer V1を紹介しましたが、普段から軽量なカーボンファイバープレート搭載シューズでレースに出ている走力のある方にとってはV1、V2ともに少し物足りないシューズになるかもしれないです。

フィット感とサイズ感について

今回もこれまで履いてきた多くのNewBalanceのランニングシューズと同様、27.5cmのDウィズを選択。特に問題なく着用できています。つま先のフィット感としては、比較的ゆったりとしたFreshForm More V4とタイトなRC Elite V2のちょうど中間ぐらいの感覚です。

RC Elite V2は他に比べると縦寸も短い印象で、先月走ったハーフマラソンの終盤で足がむくんできた際に窮屈になったこともありました。そのため、今回は念のため28.0cmも試着させてもらったのですが、これだとつま先にスペースができすぎるため、27.5cmを選択しました。結果的にはこちらを選んで正解でした。

画像:筆者私物
このシュータンがなかなか優秀で、すごく薄手でありながら必要な箇所にウレタンの張り合わせがされており、これが紐の締め付けを軽減してくれます。シュータンは両端が内底に縫い付けられたガゼットタン仕様で、着用中にシュータンがずれにくくなっています。

まとめ:初心者も履けるカーボンファイバープレート搭載シューズの好事例

これまで、AdidasのAdizero Pro(レビューはこちら)、RC Elite V2とカーボンファイバープレート搭載シューズを履いてきましたが、その中でも群を抜いて快適に履けたのは間違いなくこのSC Trainer V2です。数年前まではカーボンファイバープレート搭載シューズというと、レース用シューズのためのものという感じでしたが、現在その役割は多様化しており、各社が幅広いレベルのランナーに対応するプロダクトを用意してきているように思われます。

SC Trainer V2はその多様化した役割を説明しやすいシューズであり、初心者向けにはデイリートレーニングからレースまでをサポートする万能シューズとして、中・上級者向けにはレースに向けたトレーニングシューズとしての利用を想定してデザインされているような印象を受けました。

私としては、数か月内に控える私史上初のフルマラソンでは、SC Trainer V2で完走を目指そうと思います。レース後の感想についてもまた、レビューをさせていただこうと思います。

最後までお読みいただいた皆様、ありがとうございました。