NIKE AIR FORCE 1が生産終了危機を乗り越えて大定番スニーカーになった歴史を紐解く

NIKE AIR FORCE 1が生産終了危機を乗り越えて大定番スニーカーになった歴史を紐解く

画像引用元:nike.com

こんにちは。壮年留学生です。

本日は多くのスニーカーファンが一度は足を通したであろうナイキエアフォース1(AF1)の秘話に迫っていこうと思います。

主な参考記事はNIKE NEWS (全英語)より、AF1のデザイナーであるブルース・キルゴア本人の語録を基にした記事と、AF1復活の立役者となった方々が登場するYoutube動画を使っています。

エアフォース1と並ぶナイキバスケットボールの名作、ダンクの歴史については下記記事からどうぞ。

エアフォース1の革新性

画像引用元:solecollector.com

カップソールを初採用したナイキのバッシュ

AF1と言えばエアが初めて搭載されたバスケットボールシューズとして知られていますが、それ以外にも初めて採用された構造があります。

それはカップソールを使った工法です。AF1以前のバスケットボールシューズはブレイザーやコンバースのチャックテイラーに代表されるヴァルカナイズドソールのものが主流でした。ナイキ初のカップソールの製造はスペインにあるアウトソールの金型工場の協力によって達成されています。

また、同工場は多色成形のアウトソールの製造方法についても熟知しており、それによってAF1のツートンカラーのアウトソールが実現しました。

発売当初はハイカットのみがラインナップ。ローカットの誕生はその翌年でした。
当時のAF1はアメリカのメイン州で製造されています。
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カップソールの主なメリットは、そのサポート性と耐久性です。ヴァルカナイズドソールはその薄さから、クッション性を確保しにくいという欠点がありました。AF1ではカップソールを用い、そこにナイキエアをフルレングスで敷き詰めることによって1982年当時としては革新的なクッション性を確保しています。

デザイナー自ら地道な営業活動を実施

こうして出来上がったテストサンプルは営業用の車に積まれ、営業担当者とキルゴア自らの手によって大学のバスケットボール部員に手渡されていきました。こうした地道な営業活動によって選手からのフィードバックを受け取り、正式に製品化が決定。その卓越した機能性とNBA選手を起用したプロモーションで話題を呼びました

「オリジナルシックス」と呼ばれる6人のNBA選手を起用した当時の広告
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ちなみにキルゴアはAF1のデザイン以降、エアエース(過去にエース83という名前で復刻)というテニスシューズや、エアジョーダン2のデザイナーとしても知られています。

エアフォース1は市場から消えるはずのスニーカーだった

生産終了の危機

現代のスニーカー界の絶対的なアイコンであるAF1。おそらくこれまで最も多くのカラーバリエーションが発表されてきたスニーカーなのではないでしょうか。その完成されたデザインは他ブランドのシューズデザインにも多大な影響を与えてきました。

BAPEのBAPESTAのデザインからあふれ出るAF1感
画像引用元:highsnobiety.com

現在の市場において圧倒的な存在感をもつAF1ですが、オリジナル発売の2年後の1984年にはナイキからその生産終了が囁かれるようになります

このAF1の存続危機に反応したのが後に「The Three Amigos (スリーアミーゴズ) 」と呼ばれるメリーランド州ボルティモアを拠点とする3つのスニーカーショップでした。彼らはAF1が他のスニーカーと違うことを知っていました。1足購入した客が2足目、3足目と購入していく姿からAF1の未来を予測していたのです。

1985年、彼らはナイキとのミーティングを行い、AF1の存続を訴えます。彼らの熱意に押されたナイキはAF1の再導入を条件付きで受け入れます。その条件とは、AF1の2つの新色各1200足を彼ら3店舗で買い取ることでした。

仮に25.5cm~30.0㎝までを同数在庫する場合、サイズ毎の在庫数は120足となります。3店舗で分け合うとは言えネット販売が普及しておらず、販売ルートのほとんどが店頭だったことを考えるとかなりの数量だったのではないでしょうか。

スリーアミーゴス (Downtown Locker Room, Cinderella Shoes, Charley Rudo Sports) の訴えによって復活した新色AF1(手前の2色)
画像引用元:nike.com

彼らの予想通り、ロイヤルとブラウンを差し色に使った新色のAF1は瞬く間に売れていったそうです。

エアフォース1の街、ボルティモア

1986年、前年の結果を受けたナイキはAF1に関する新たなキャンペーンを展開します。その名も“Shoe of the Month” Club (シュー オブ ザ マンス クラブ) です。これは、限られたスニーカーショップで毎月新色のAF1がリリースされるというもの。

この取り組みは大きな宣伝活動なく実施されましたが、口コミによってアメリカ東海岸全体に広がっていくことになります。キャンペーン中はニューヨークやワシントンDCといった大都市からAF1を求める人たちがボルティモアに殺到したそうです。

彼らスリーアミーゴズの活躍がなければ、現在のAF1を取り巻く状況は全く異なっていたように思います。

ボルティモアに設置されているベンチには、「エアフォース1を救った街」とナイキからのメッセージが記載されています。
画像引用元:baltimoresun.com

まとめ 35年以上にわたり愛され続けるマスターピース

私個人としては定番中の定番ということで最近は少し敬遠していました。しかし、この記事を作成するにあたってAF1について調べていくほどにその魅力に取りつかれてしまいました。

人と被るのが嫌という方は何年か前のカラーリングをリセールショップで探してみたり、思い切ってNike By Youでご自身のオリジナルカラーを作成してしまうのもアリなのではないかなと思います。

最後に、過去に発売されたAF1の中から私が特に気になるモデルをご紹介して今回の記事を締めくくらせていただきます。

Roc-a-Fella Records

画像引用元:news.nike.com

2000年に発表されたRoc-a-Fella Recordsとのコラボレーションモデルです。フレッシュな白のAF1のヒールにロゴを添えた潔い一足。AF1は多くのヒップホップミュージシャンに愛されました。特にオールホワイトのAF1は彼らのスタイルを象徴するカラーリングです。

2002 年には「Air Force Ones」というそのまんまのタイトルの楽曲も登場しています。

Lunar Force 1

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こちらは2012年のAF130周年の際に登場したルナフォースワンです。アッパーにはフューズテクノロジー、重量のあったソール部分はルナロンというクッション素材に変更され、大幅な軽量化と抜群の履き心地を確保していました。蛇腹状になったミッドソールが当時のルナロンの特長です。

The Vac Tech technology

画像引用元:news.nike.com

こちらも30周年の2012年発売の、マックスエアが搭載されたAF1です。アッパーはワンピースアッパーでありながら熱成形によって素材を張り合わせてあるかのような凹凸を表現したバキュームテックと呼ばれる工法が使用されています。カモフラのAF1はこれまで何度か発売されていますが、このバージョンが歴代屈指のかっこよさだと思っています。

AF1は5年毎に周年キャンペーンを行っており、その際に発売されるカラーリングに魅力的なものが多い印象です。次回は2年後の2022年です

Nike By You

画像引用元:news.nike.com
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こちらは2017年にNike ID(現在のNike By You)に期間限定で登場したレイカーズエディションのAF1です。スネークスキンを模したアッパー、ヒールのナンバリングを見てもわかる通り、コービーブライアントの栄光を祝した仕様です。

Nike By Youにはときどき期間限定のオプションが登場するので、珍しいカラーリングや材質を希望される方は定期的にチェックされることをおすすめします。

BHM 2018

撮影:筆者
撮影:筆者

最後は私物のエアフォース1BHM(2018)です。見た目にはヒールのEQUALITY.のプリント以外はオールブラックのAF1なのですが、履き心地、軽量性共に改善されています。

重たいラバー製のミッドソールは省略され、中敷きには分厚いドロップインインソールが採用されています。材質はリアクトだったかファイロンだったか忘れてしまったのですが、ソフトなフォーム素材のヒールにはズームエアが埋め込まれています。

毎年のBHMには好みのデザインが多いのですが、このエアフォース1は国内正規展開がなかったため、WORM TOKYOで購入しました。

最後までお読みいただいた皆様、ありがとうございました。