コービーが現役時代に着用していたバッシュをまとめてみる(8/最終回)~キャリア晩年編~
画像引用元:dailynews.com
こんにちは。壮年留学生です。
これまで7記事に渡って解説してきたコービーの現役時着用バッシュの軌跡も、今回の8回目で最終回となります。
今回は前シーズンに左アキレス腱断裂というプレーヤー生命に関わる怪我を負い、その翌年にあたる13-14シーズンから伝説的なパフォーマンスを披露した2016年の引退試合までを追いかけつつ、この企画を締めくくらせていただこうと思います。
前回の記事はこちらのリンクよりどうぞ。
13-14シーズン:怪我からの復帰と超ハイカットバッシュ、コービー9エリートの誕生
左アキレス腱断裂後、わずか8か月での試合復帰
2013年4月のレギュラーシーズン終盤、左アキレス腱断裂という大けがを負い、翌シーズン中の復帰も疑問視されていたコービーでしたが、2013年12月8日にわずか8か月という短い治療期間で試合復帰を果たします。
ちなみにこの8か月というのはアキレス腱断裂時の手術後におけるミニマムの治療期間を指しているそうです。通常であればここから更に数か月間のリハビリや調整を行った後、ようやく試合復帰となるんだとか。例えば、かつてコービーと同様の怪我を負った元オールスタープレーヤーのデマーカス・カズンズの場合、約1年間の治療期間を経た後にようやく復帰しています。
負傷以前のパフォーマンスとはいかないものの、20得点以上を記録した試合もあり、チームの勝利に貢献していたコービー。
しかし、復帰後6試合をプレーした後、左膝の故障が発覚。以降の試合には出場することなく、復帰からわずか数週間でこのシーズンを終えることになりました。
フライニット初搭載バッシュ、コービー9エリートの誕生
この13-14シーズンをコービーと共に戦うはずだったバッシュがこちら、コービー9エリートです。
ズームコービー以降、シリーズの代名詞であったシンプルなローカットデザインから一変、歴代のバッシュの中でも足首のかなり高い位置までアッパーが延長されています。
そんなアッパーの素材にはバスケットボールシューズとしては初めてフライニットを採用。2012年にランニングシューズに搭載され発表されたフライニット (バスケットボール用に使うには頼りなかった) は、サポート性と耐久性が強化され、このコービー9エリートでバスケットボールコートにデビューすることになりました。
フライニットのアッパーは、サポート性をもたせたい箇所と足の動きを妨げない柔軟性を維持したい箇所とで異なる編み方を採用。これによってハイカットシューズのサポート性能とローカットシューズの柔軟性を両立しています。また、コービーが求めた「ナチュラルモーション」の再現にも大きく寄与しているとのこと。
クッショニングには前作の通常版同様、フルレングスルナロンのドロップインインソールを採用。クッション性を維持しつつ、接地感覚を重視した設計です。
また、前作まではプレーオフ時期の発表が通例であった「エリート」の名前が、コービー9の場合は発表時の初期モデルにつけられています。それもあってか同バージョンを象徴するカーボンファイバープレートがミッドソールの側面に装着されています。軽量かつ強靭なサポート性を提供してくれています。
後に無印版ローカットがエンジニアードメッシュアッパーで発売されました。
HTM版他、魅力的なカラーリングが多数登場
史上初のフライニット採用シューズとなったコービー9エリートには、ニット状のアッパーを生かした鮮やかなカラーリングが多数リリースされました。
私は2015年のBHM(ブラックヒストリーマンス)パックで登場したカラーリングに未だに心を奪われています。以前の記事でも書かせていただいた通り、個人的な意見として最も復刻してほしいのはズームコービー3ですが、次いで復刻を望むのがこのBHMカラーのコービー9です。
また、藤原ヒロシ (H)、ティンカー・ハットフィールド (T)、 マーク・パーカー (M) の3人のクリエイター、およびナイキのキーパーソンからなる企画、HTMのベースシューズとしてコービー9エリートローが選ばれています。無論、販売店舗を極端に絞り込んだ超数量限定でのリリースでした。
14-15シーズン:年齢を感じさせない活躍度の一方で本人を苦しめた度重なる負傷
復活を予感させる活躍
キャリア19年目、36歳で新たなシーズンを迎えたコービー。2シーズン前の左アキレス腱断裂に加え、前年の左膝の怪我によるシーズンわずか6試合の出場により、さすがに全盛期のパフォーマンスを取り戻すことは難しいように思われました。
もちろん、怪我以前の身体能力を生かしたアグレッシブなプレーを見ることは難しくなりましたが、14-15シーズンの序盤で見せた活躍には目を見張るものがありました。中でも2014年11月30日のトロント戦では、31得点を含むトリプルダブルを記録しています。
シーズン開始から最初の27試合の試合平均出場時間を35.4分、同得点を26.4とし、前年までの怪我に苦しんだシーズンを忘れさせるような活躍により、人々は彼の復活を期待しました。
2014年12月14日にはキャリア通算得点でマイケル・ジョーダンの記録(32,292得点)を抜き去り、歴代3位(現在はレブロン・ジェームス)の座につきます。
コービーを苦しめる全身の怪我
シーズン序盤は好調に見えたコービーでしたが、かねてからの怪我の影響からか、精彩を欠いたプレーが見受けられるようになります。一人で1試合9回のターンオーバーを犯したり、フィールドゴール成功率26.7%(8-30)を記録したりと、なかなかチームを勝ちに導くことができませんでした。
コービー以前から苦しんでいた膝やアキレス腱の痛みに加え、背中や腰の不調にも悩まされていたそうです。更に2015年1月15日のペリカンズ戦にてリングに向かってドライブした際に右肩の腱板を断裂。治療のための手術を行う決断をし、またしてもシーズン途中で戦線を離れることになりました。
チームは21勝61敗という戦績でシーズンを終えています。
よりシンプルになったシリーズ第10作目、コービー10
またしても発表シーズンの着用が叶わなかったこの年のコービーのシグネイチャーシューズがこのコービー10です。
非常にシンプルでミニマルな印象を与えてくれるアッパーは当時新開発の縫い目のないテキスタイルが使用されていました。サメの皮革からインスパイアされたこの素材は耐久性、軽量性、通気性のどれをとってもそれまでのメッシュ素材を凌ぐ性能があったそうです。
クッショニングにはルナロンミッドソールにレギュラーモデルでは久々の登場となったヒールズームエアのセットアップです。また、ミッドソール前足部にはナイキフリーテクノロジーを用いた溝が入れられており、屈曲性が高められています。透明なアウトソールからその様子を確認することができます。
15-16シーズン:20年のキャリアを締めくくる最後のシーズン
引退表明
15-16シーズン開始前のプレシーズンゲームに出場していたコービーはふくらはぎの負傷によりプレシーズンの最後の2週間を欠場。またしてもシーズンのほとんどを欠場するのではと思われましたが、レギュラーシーズン開始時のオープニングゲームにしっかりと出場。レイカーズ一筋、20年目のシーズンをスタートしました。
シーズン序盤の2015年11月29日、コービーはこのシーズンを最後に引退することを表明します。コービーはThe Players’ Tribuneと呼ばれるウェブメディアに投稿した詩を以て引退を発表。この詩は、後にアカデミー賞を受賞するショートアニメーション作品、「Dear Basketball」のベースになったことで知られています。
具体的に引退について語ったパートには下記のように書かれていました。
“This season is all I have left to give. My heart can take the pounding. My mind can handle the grind but my body knows it’s time to say goodbye. And that’s OK. I’m ready to let you go.” via ESPN
(自分の全てを置いていくシーズンになる。ハートはまだわくわくできるし、気持ちの面ではまだハードにプレーできる。でも身体はこれでさよならだということを理解している。それでいい。私もまたその準備ができている。)
和訳の精度については補償しかねますのであしからず。。。
引退発表後、コービーはアウェーゲーム時の対戦チームに対して引退セレモニーの開催をしないでほしいとリクエストしたそうです。しかしそんな願いも叶うはずはなく、かつては大ブーイングを受けたライバルチームのホームコートのファンにスタンディングオベーションで迎えられ、最終シーズンのお別れツアーが行われました。
最終シーズンの彼のパフォーマンスがまとめられている動画がありましたので共有させていただきます。アウェーにおいても現地のファンから大きな歓声を受けていることがわかります。一部ブーイングが聞こえてくる試合もありますが。
シーズン序盤はコービー10エリートを着用
アキレス腱負傷後としては最も多くの試合に出場 (66試合)したシーズンとなったコービー。以前までのように昨シーズン発表のモデルを着用して現役最終シーズンをスタートしました。
本人着用のシリーズ最終モデル、コービー11エリート
2015年12月30日の年末の試合にて本人によってはじめて着用されたコービー11エリート。開発にあたってコービーが求めたのは、”バスケットボールのための史上最高のフライニット“でした。発言から察するに、本人はフライニットを非常に気に入っていたようですね。
コービーの要求を受けたエリック・エイバー率いる開発陣は、フライニットを構成する糸に着目。TPU製の糸を使用することでこれまでのフライニットにはない強靭なサポート性能と耐久性を実現します。
エイバーがコービーシリーズのデザインにあたって常に意識していたことは“less is more(少なく、シンプルであることがより良いとする考え方)“でした。この思想はシリーズの集大成であるこのコービー11エリートの極限までシンプルに仕上げられたデザインに強く表れているように思います。
伝説的な引退試合
2016年4月13日、レイカーズのホームコートであるステイプルズセンターにてコービーの引退試合が開催されました。対戦相手はユタ・ジャズです。
皆さんご存知の通り、キャリア20年目、37歳で迎えた彼のこの日の試合は、引退試合とは思えぬ素晴らしいパフォーマンスとチームの勝利で幕を閉じています。
試合の終盤の怒涛のパフォーマンス、および試合後のインタビューについてまとめられた動画がありましたので、是非下記よりご覧になってみてください。
シーズンの終盤、ナイキはコービーのキャリアを称えた「ブラックマンバパック」と呼ばれるカラーリングのシューズをリリースします。この特別なパックはナイキのコービーシリーズ11足と、彼にゆかりの深い2足であるズームハラチ2K4と初代ハイパーダンクを含めた合計13足で展開されました。
さて、本人の誕生日である8月23日からスタートし、全8回に渡ってお送りしてきたコービーが現役時代に着用していたバッシュと共に彼のキャリアを振り返る当企画。書いている内に力が入ってきてしまい、なかなかボリュームのある記事になっていきました。
ナイキのコービーシリーズはエアジョーダンシリーズと同じく、本人の引退後もシリーズは継続され続けており、2020年になった今でも多くのファンを抱えています。
前述した通り、ナイキのコービーシリーズは代を重ねる毎にだんだんと無駄を排除したシンプルなデザインに変化していっていました。これは、正にコービーが求めた軽量性や接地感覚を追求した結果であり、彼のストイックな性格にマッチしたシューズと言えると思います。このことは競技用シューズとしての完成度の高さや、未だに多くのシリアスプレーヤーから支持されている理由にもなっているのではないでしょうか。
次回からは一旦シリーズものはお休みさせていただき、毎日ランニングの経過や、購入したもののまだ記事にできていないシューズについて執筆していければと考えています。
最後までお読みいただいた皆様、ありがとうございました。
[Bibliography]
Schlemmer, Z. (2016, April 7). Kobe Bryant’s 20 Year Sneaker Legacy – Part 5: Flyknit and the Farewell. Retrieved from https://sneakernews.com/2016/04/07/kobe-bryants-20-year-sneaker-legacy-part-5-flyknit-farewell/
Kobe Bryant. (2020, August 15). Retrieved from https://en.wikipedia.org/wiki/Kobe_Bryant
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