コービーが現役時代に着用していたバッシュをまとめてみる(6) ~ズームコービー4の登場によるローカットバッシュ革命編~
画像引用元:sneakernews.com
こんにちは。壮年留学生です。
コービー・ブライアントの誕生日である8月23日より執筆を開始した彼の歴代着用バッシュを振り返る本企画。
第6回目の今回は「ローカットバッシュ革命編」ということで08-09シーズンにコービー本人が着用していたズームコービー4ついて解説していきます。
2年連続の得点王とキャリア唯一のシーズンMVPを獲得した際にコービーが着用していたシューズについては下記、過去記事よりご覧ください。
08-09シーズン:ローカットバッシュ革命と4度目のリーグ制覇
ハイパーダンクとズームコービー4のハイブリッドシューズ
08-09シーズン開始前の夏、コービーは同年のNBAファイナル終了から1か月と数日後には五輪代表として北京オリンピックに出場。アメリカ代表チームの金メダル獲得に貢献しました。
このとき着用していたのは自身のシグネイチャーモデルではなく、
初代ハイパーダンクでした。コービーは広告塔として、オリンピックの舞台にて当時のナイキの最新バッシュ、ハイパーダンクのプロモーションに存分に貢献しました。
さて、この年のレイカーズは、昨シーズンのファイナル進出メンバーをほぼ残しつつ、引き続き好調を維持します。シーズン序盤、コービーは昨シーズンに引き続き初代ハイパーダンク (と思しきモデル) を着用していました。
しかし、よくよく見るとソールユニットが通常のものと異なり、ハイパーダンクのアッパーに、この後発表されるシリーズ最新作、ズームコービー4のソールユニットを融合させたハイブリッドモデルとなっています。
バッシュ市場にローカット革命を起こしたズームコービー4
2020年現在、競技用のバッシュの選択肢としてローカットシューズを選ぶことは全く珍しいことではないと思います。しかし、私を含めたひと昔前の競技経験者にとってこの状況は少なからず異様に映るのではないでしょうか。
少なくとも00年代に部活生としてプレーしていた私にとって、当時ローカットのバッシュを履いたプレーヤーはかなり珍しかったと記憶しています。
当時はバッシュは足首の故障を予防するであろうという理由で足首を覆う入トップの形状であることが当たり前でした。ですので、ローカットシューズを着用したプレーヤーを見かけることは非常に稀でした。
当時のNBAにおいても似た状況で、ローカットシューズの着用者はかなり少数派、かつサイズが比較的小さいバックコートプレーヤーであったことは間違いないと思います。
そんな当時のバッシュ市場の「常識」に疑問を呈したのがコービー・ブライアントです。
彼の言い分は、“バスケと同じぐらいストップ&ダッシュを繰り返し、バスケ以上に足首や脚全体を使ってボール扱うサッカー選手はむしろ好んでシンプルで軽量なローカットシューズを好んで着用している”、というものでした。
詳細は以前書かせていただいたナイキのバッシュに進化を辿る記事にて解説していますのでそちらをご覧になっていただければと思いますが、このシーズンに登場することになる革命的軽量ローカットバッシュはコービーのこの発言をきっかけとして誕生したとされています。
ハイパーダンク、およびズームコービー3のデザイナーであったエリック・エイバーはこの発言を受け、当時の最新技術であるフライワイヤーと軽量クッショニング素材、ルナロンを搭載したローカットバッシュ、ズームコービー4を誕生させました。
ローカットシューズということで足首の負傷を懸念する声もあったそうですが、コービー自身はこのシューズを履いた08-09シーズンを1試合も欠場することなく終え、西カンファレンス1位の成績でプレーオフに進出します。
また、当時のローカットシューズに対するネガティブなイメージを逆手に取った “Ankle Insurance” (足首傷害保険) と呼ばれるプロモーションビデオも登場しました。
足首傷害保険会社の社長に扮したコービーが、ズームコービー4の着用者(の切れ味を増したドライブ)により、他のシューズを履いたディフェンダーは足首の怪我 (Broken Ankles) のリスクが高まるので選手に対して保険への加入を推奨する、というもの。
そしてその保険とは “unorthodoxly”、つまり “正統派ではない” ローカットバッシュのズームコービー4を着用することであり、さもなければ故障によって夢が経たれるという内容でした。
01-02シーズン以来となる通算4度目のリーグ制覇
2008年のプレーオフ、コービー率いるレイカーズはプレーオフにてデンバー・ナゲッツとのウェスタンカンファレンスを戦います(今年の対戦カードと同じですね)。
このシリーズにて繰り広げられたコービーと若いころのMeloことカーメロ・アンソニー(当時24歳)とのバチバチのやりあいは必見です。
メロとの対戦は第6戦までもつれ込んだ末にレイカーズが勝利し、コービーは2年連続でNBAファイナルに進出します。
迎えた最終決戦は、19-00シーズンをロサンジェルス・レイカーズの控えセンターとしてプレーするドワイト・ハワード率いるオーランド・マジックとの対戦でした。シリーズは第5戦まで行われた末、レイカーズが制覇。コービー本人にとって7年ぶり4度目のチャンピオンシップ獲得となりました。
コービーはファイナルを通してNBA史に残る試合平均32.4得点、7.4アシスト、5.6リバウンドという驚異的なスタッツを記録。優勝チームのプレーヤーとしてシリーズ試合平均30得点、5アシスト、5リバウンドの達成は、マイケル・ジョーダン以来の快挙でした。
この活躍を受けたコービーは本人初となるファイナルMVPを獲得しています。(過去3回の優勝時は全てシャックが受賞)
ズームコービー2、3をすっ飛ばしてプロトロ化
ズームコービーシリーズの復刻版として発表されたパフォーマンスレトロシリーズの第一弾である初代ズームコービーに続き発売されたズームコービー4。2、3をすっ飛ばしてズームコービー4が復刻された理由としては、おそらくバッシュとしての完成度の高さと、昨今のロートップバッシュ全盛の流れがその理由かと思われます。
ズームコービー1のプロトロ化の際には、前後分割エアがフルレングスズームに変更され、比較的その変化がわかりやすかったように思います。
一方、ズームコービー4については、各種レビューサイトを拝見したところ2009年発売のオリジナル版から大きな変化はないとのこと。
その競技用シューズのパフォーマンス性能の高さは18-19シーズンのプロトロ復刻時のNBA選手の着用率からも表れていたように思います。
ズームコービー4の成功は以降のコービーシリーズはもちろんのこと、競合他社のシューズ開発にも大きな影響を与えていったように思います。
仮にズームコービー4登場以降から現在までの競合他社のロートップバッシュのラインナップを確認することができたなら、おそらくその数は年々増えていっていたでしょう。
更に、オリジナルの発売から10年を経過した今でもトップレベルの選手に愛される機能性と信頼性を維持しているという点もまた、ズームコービー4とそのデザイナーであるエリック・エイバーの功績の偉大さを強調しているように感じます。
ということで今回はコービー4度目のリーグ制覇を支えたズームコービー4について解説してきました。
次回はリピートを目指すレイカーズと更なる進化を遂げたローカットバッシュ、ズームコービー5以降のモデルについて振り返っていこうと思います。 (公開済み)
最後までお読みいただいた皆様、ありがとうございました。
[Bibliography]
Schlemmer, Z. (2016, March 31). Kobe Bryant’s 20 Year Sneaker Legacy – Part 4: The Rise of the Low-Top. Retrieved from https://sneakernews.com/2016/03/31/kobe-bryants-20-year-sneaker-legacy-part-4-the-rise-of-the-low-top/
Kobe Bryant. (2020, August 15). Retrieved from https://en.wikipedia.org/wiki/Kobe_Bryant
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