NIKEのバスケットボールシューズの進化の歴史を辿る【その1~1990年代前半編~】
1992年以降のナイキのバスケットボールシューズを振り返る。
こんにちは。
今回からナイキのバスケットボールシューズの進化の歴史を、全4回に分けて記事にしていきます。
NIKE NEWSというスニーカーファン必読のオフィシャルニュースサイト
参考資料にはいつも通り、ナイキのオフィシャル情報を発信しているNIKE NEWS(news.nike.com / 英語記事)を使っています。
ネット上に出回る情報は日本語のものよりも英語で解説された記事の方が圧倒的に多いのが世の常です。
スニーカーの情報に関しても同じなのではないかなと思います。
例えば日本版のナイキのオフィシャルサイトには、NIKE NEWSで公開されている情報はほとんど掲載されていません。このサイトには企業の単なるプレスリリースページ以上の情報が盛り込まれており、スニーカーが好きな人が楽しめる情報が山ほど蓄積されているんです。
和訳されていないことが非常に残念です。
話は逸れましたが、今回を含めた以降4回のブログは過去にナイキから発売された傑作バスケットボールシューズのデザインの背景を紐解きつつ、スニーカーファンの方に楽しんでいただけるような記事にしていけたらと思っています。
AIR FORCE 180 (1992)
【エアフォース180の主な特徴】
- 衝撃吸収性の最大化を目指した大型のビジブルヒールエア
- 安定性を高めるミッドフットストラップ
- チャールズバークレーがバルセロナオリンピックで着用してゴールドメダル獲得
まず最初にご紹介するのはエアフォースマックス180です。ヒール部の当時においてはかなり大型のエアが特徴のバスケットボールシューズです。
このシューズはナイキエアが開発された14年後の1992年に発表されました。
シューズのデザインにあたってのコンセプトはナイキエアを進化させること。
従来よりもクッショニング性能を50パーセント向上させた大型のエアを搭載しています。アウトソール側からも大型のエアの存在を確認できるデザインが特徴的です。
1992年のバルセロナオリンピックで活躍したドリームチームの一員であるチャールズバークレーの力強いプレーを支えた一足としても知られています。
90年代当時のナイキバスケットボールシューズはガードプレーヤー向けのFlight(フライト)、オールラウンダー向けのUptempo(アップテンポ/95年~)、そしてインサイドプレーヤー向けのForce(フォース)に分かれていました。
このエアフォースマックスも大型エアとアッパーのストラップでクッション性と安定性を高めてあり、正にインサイドプレーヤー向けのシューズです。
AIR FLIGHT HUARACHE (1992)
【エアフライトハラチの主な特徴】
- バスケットボールシューズ初搭載となったハラチシステム
- 最低限のサポート性能を残して軽量化されたアッパー
- かつてコービーブライアントも着用
ストリートでも人気のエアハラチと同じく、靴内にネオプレーン素材のブーティーを配したハラチシステムを初めて採用したバスケットボールシューズです。このシューズ、スウッシュが配されておらず、一見するとナイキのシューズなのかどうかすらわかりません。
それもそのはず、このシューズはデザインの際にバスケットボールシューズとして機能する最小限のパーツを残しつつ、どこまで軽量化できるかが主眼に置かれました。
そのためにはスウッシュすら無用だったわけですね。
ちなみにデザイナーはティンカーハットフィールドです。
レザーをただ縫い合わせたアッパーではなく、骨格のようなパーツを用いた構造は、それまでのバスケットボールシューズの構造とあまりにも異なっています。
おそらく当時のバスケットボール市場は度肝を抜かれたはずです。
ガードプレーヤーを中心に着用されていたかとは思うのですが、私にとってはこの方が着用していたのが何よりのポイント。
話は逸れるのですが。コービーブライアントの2002-2003シーズンはアディダスとの契約が終了した直後のシーズンで、どのメーカーにも属さないFA状態でした。このシーズンにコービー専用カラーとして用意されたスニーカーはかっこいいものが多かった。
AIR RAID (1992)
【エアレイドの主な特徴】
- アウトドア専用バスケットボールシューズとしてデザインされている
- 安定性と着用者の気合(?)を高めるクロスストラップ
- 頑丈で重たいアウトソール
続きまして、エアジョーダン8のようなクロスベルトが特徴的なエアレイドです。
当時、ストリートバスケットボールが流行していたらしく、それを追う形で開発されたアウトドア専用バスケットボールシューズです。
こちらもティンカーハットフィールドがデザインに参画しています。
開発にあたってはデザイナーチームがニューヨークのストリートバスケコートに足を運んだそうです。そこで行われている試合はインドアで行われているそれとはまるで違っており、大きなリーグで活躍する選手ではなく、むしろローカルのレジェンドたちが光り輝く場所でした。
クロスストラップにはそこで見た景色が反映されているとのこと。
ティンカー曰く、“That X strap was about strapping up to go into battle, because you’re going to get knocked around the frickin’ cage and you need to strap yourself in.” だそうで。
要するにストラップを締め上げることにより、シューズだけでなく、ストリートバスケの激しい戦いに向けて自分自身にも気合を入れる、という意味が含まれているということではないでしょうか(雑)。
かっこいいコンセプトです。
2008年だったか2009年だったか、とにかく私が大学生のころに復刻発売がありました。当時某スニーカー店でバイトをしていた私は都会の店舗からこっそりエアレイドを取り寄せ、購入したことを思い出します。
分厚くごつごつとしたアウトソールとブラック/グレーのシックなカラーリングが渋いかんじがしてよく履いていました。重量はかなりありましたが。
またいつか復刻してほしい一足であります。
追記:2020年冬に復刻されました
AIR MAX2 CB (1994)
【エアマックススクエアCBの主な特徴】
- バークレーの攻撃的なパーソナリティを落とし込んだデザイン
- 大型のマックスヒールエア
- 激しいプレーを支える拘束衣を模したサポートストラップ
続いては最初に紹介したエアフォース180から2年後に発表されたチャールズバークレーのシグネイチャーモデル、エアマックス2(スクエア) CBです。
デザインには現役時のチャールズバークレーのパーソナリティが反映されているそうな。
今でこそTNTのコメンテーターを務めるほど落ち着いていますが、プレーヤーとして活躍していたころの素行は良いとは言えず、それが原因でナイキとの契約も難航したそうです。
また、ひとたび試合になればその強靭な肉体と狂気でコート内を所せましと暴れまわっていました。
そんな彼の有り余るパワーを抑え込む(サポート)べく、エアマックススクエアCBには拘束衣(画像検索してみてください)をイメージしたサポートストラップをアッパーに配し、ミッドソールに歯のようなアウトリガーをデザインしています。
デザインの裏側を知ると同じ靴が違って見えてくるのがまたスニーカーのおもしろいところですね。
AIR PENNY (1995)
【エアペニーの主な特徴】
- ペニーハーダウェイの最初のシグネイチャーモデル
- フォアフットズームエアとヒールマックスエアを配したオールラウンダー向けバスケットボールシューズ
- ミッドソールの巻き上がりが安定性向上に寄与
こちらは、ネクストジョーダンと言われたほどの実力者であったペニーハーダウェイのシグネイチャーモデル第一弾となったエアペニーです。
本作はコービーシリーズのデザイナーとしても知られるエリックエイバー氏によるもの。ペニーのオールラウンドなプレースタイルを支えるシューズをコンセプトにつくられています。
前述のアップテンポシリーズはこのエアペニーと共に誕生しています。
一人の選手によってナイキの看板カテゴリーであるフライト、フォースにならぶアップテンポが誕生したわけです。当時のペニーの影響力のすごさを物語ります。
スピーディーなプレーとパワープレーの両方をサポートするために前足部には当時新開発だったズームエア(当時はテンシルエアと呼ばれていた)を、後足部にはマックスエアを搭載。90年代や2000年代前半によく見たセットアップですね。
また、興味深い意匠として、前、中足部から巻き上がったミッドソールが挙げられます。ミッドソールからアッパーに向けてフォームを走らせることで、足のサポート性を高める構造になっています。
これの進化系がフォームポジットテクノロジーかなーなんて思いますが、この話はまた次回以降にたくさんさせていただこうと思います。
まとめ エアジョーダンシリーズだけでないナイキバスケットボールシューズの奥深さを堪能。
90年代と言えば正にマイケルジョーダン全盛の時代です。そして彼と共に戦ったエアジョーダンシリーズは間違いなくスニーカーの歴史における傑作揃いです。
今回記事をまとめてみて思ったことは、ジョーダン以外のバスケットボールシューズも負けず劣らず、それぞれに素晴らしい開発ストーリーがあるということです。
次回のブログでは90年代後半~00年代に入ってからのスニーカーを紹介できると思います。私が部活動でバスケをしていた時代とも被ってきますので、記事を書くのが今から楽しみです。(全4編公開済み。)
最後までお読みいただいた皆様ありがとうございました。
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