スニーカーブランド三社がつくるフェイスマスクについてまとめてみる。

スニーカーブランド三社がつくるフェイスマスクについてまとめてみる。

(画像引用元: news.nike.com)

2019年末にその存在が確認され、現在に至るまで世界中を混乱の渦に巻き込んでいるコロナウイルスことCOVID-19。

こちらトロントにおいてもかれこれ1か月半にわたって自宅に籠る生活を行っています。 3月中旬よりカレッジの授業が全てオンラインクラスに変更となり、スーパーやドラッグストア等、生活必需品店以外のお店は一時的な営業停止状態となっています。

一方で、医療現場は感染者の拡大に伴って多忙を極め、ベッド不足が叫ばれ、医療崩壊という聞きなれない言葉が毎日のようにニュース番組から聞かれるようになりました。

この状況を受け、国だけでなく、企業も医療従事者に対するサポートを行うようになりました。それらの企業には我々の愛するスニーカーブランドも含まれており、各社、現地の医療現場で枯渇しつつあったマスクの生産を開始しました。それぞれに興味深い開発背景がありましたのでご紹介させていただこうと思います。

AIRクッショニングの製造技術を応用したNIKEのフェイスシールド

スピーディーに医療現場へ共有するため、製作工程の簡素化も意識したんだとか
画像引用元: nike.news.com

オレゴン健康科学大学およびローカルの医療機関の協力の下作成されたフェイスシールド

上記画像については各種ニュースサイト内でも紹介されていたため、その存在についてはご存知の方も多いかもしれません。

ナイキでは画像にあるFull-Face Shield(フルフェイスシールド)の他にも、Powered, Air-Purifying Respirator(パワードエアピューリファイイングレスピレイター/PAPR)と呼ばれるヘルメットと一体型の電気式の空気清浄シールドを開発しました。その寄贈先はナイキのお膝元であるオレゴン州の医療機関を皮切りに、米国各州に拡大しているようです。

画像真ん中の方が着用されているのがPAPRだと思われます。
画像引用元: news.ohsu.edu

製作にあたってはエアクッショニングの生産工程を活用

開発にあたってはOregon Health & Science Universityの協力の下、ナイキが持つ既存の資材や施設を利用して作られています。

本体上部の装着時に額に接するパディングは本来はスニーカーの一部に使われる予定だったもの。シールドを頭に固定するための紐はウェアの製造に使われるはずだったパーツを流用。

そしてシールド本体についてはナイキが誇るクッショニングシステム、AIRの材質と製造設備を活用して製作されています。フェイスシールドについては上述の3つのパーツを9つの手順で製造しています。

公式ホームページ内(news.nike.com)の開発秘話で医療従事者の方のことをHealthcare Athlete (ヘルスケア アスリート)と表現しており、目的は違えど、自社の製品を使う人のことをアスリートと呼ぶその姿勢は好感がもてます。

Adidasは3Dプリントミッドソールを活用したフェイスシールドを作成

4D-Midsoleテクノロジーを活用したフェイスシールド

形状はナイキのそれとほぼ同じです。
画像引用元: news.adidas.com

見たことのある質感ですよね。
画像引用元: news.adidas.com

さて、アディダスもナイキと同じくフェイスシールドを作成しています。スニーカーファンの方ならばこのハチの巣みたいな黄緑色のパーツからアディダスのあるテクノロジーを連想したはず。

これです。4D-Midsoleっていうテクノロジーですが、3Dプリンタで作成されています。
画像引用元: news.adidas.com

Carbon社との共同開発のより生産効率を高めている

今回のフェイスシールドの記事を見るまで私も知らなかったのですが、そもそも4D-MidsoleはアディダスとCarbonなる3Dプリンター技術のパイオニア的存在の企業との共同開発によって生まれたテクノロジーだそうで、今回のフェイスシールドにもCarbon社のロゴが刻まれています。

パーツ製造の様子は下記動画からどうぞ。

4D-Midsoleと同じ材質を使うことで医療現場における長時間着用時も快適に着用できるのだとか。

同社の設備を使えば1週間に最大50,000個のクッションパーツの生産能力があるそうな。希望する医療事業者はアディダスにリクエストを送ることで発送の手続きをしてもらえるとのこと。

ナイキと比べると「自社独自の・・・」という要素が少なかったように感じます。通常の商品についてもそうなのですが、ナイキは商品にストーリーを付与するのがアディダスよりも一枚も二枚も上手な感じがします。

アディダスはナイキより長い歴史がありますが、その見せ方に大きな差があるように感じてしまいますね。

Newbalanceはフェイスマスクを自慢のUSA工場にて製作

M990V5と同じ工場で作られるマスク

ニューバランスではフェイスシールドではなく、鼻と口を覆うフェイスマスクを企画。

ローカルの医療現場からのフィードバックを元に名門、マサチューセッツ工科大学と共に共同開発したフェイスマスクは、「医療現場の方が自信を持って使用できるクオリティ」を実現させるため、FDAと呼ばれる米国食品医薬品局が定めた基準に沿って作成されているのだとか。

ナイキ、アディダスとは違い、鼻と口を覆うフェイスマスクを医療現場向けに作成。
画像引用元: newbalance.newsmarket.com

パーツ数は先に紹介したフェイスシールドよりも多い模様。
画像引用元: newbalance.newsmarket.com

1週間に100,000個の生産を目指しているそうです。
画像引用元: newbalance.newsmarket.com

生産体制構築の早さと確かなクオリティに脱帽

未曽有の事態を受け、元々スニーカー生産のための工場を2週間経たない内にフェイスマスクの生産ラインに変更したそうです。

このフェイスマスクはもともと同社の工場で使用していた原材料を、スニーカーのアッパーのパーツ切り出し作業の際と同じカッティングマシーンを用い、適当な形に切断されたものを使って生産されます。

マスク本体を5層構造にすることでマスクの濾過機能の向上と快適なフィット感を実現しているそうです。

また、縫製作業による生地への穴あきを嫌い、熱圧着により各素材を結合しています。

首の後ろにまわす紐については、ニューバランスのスニーカーに使われている伸縮性のある靴紐が使用されており、頭のサイズに合わせてフィット感を調節できるようになっているそうです。一度使ってみたいものです。

まとめ

各社の生産背景を知ったことで、例え専門とする領域でなかったとしても、それぞれの製品からは医療従事者を本気で助けるためのこだわりが感じられました。

これらの活動は世の中が各社に期待している以上の社会的責任を果たしていると思います。

特に印象的だったのは各社のスピード感です。

現在は日本でもマスクの生産を表明する専門外の製造業もいくつか出てきていると思いますが、米国ナイキに至っては現地時間の4月3日には最初の供給を開始しています。

上記のような企業の活躍だけでなく、我々の自宅待機も含めた社会全体の協力によって一日も早い社会の復旧を望むばかりです。

最後までお読みいただいた皆様ありがとうございました。