【シューズレビュー】adidasのADIZERO PROを履いて走ってみた
こんにちは。
今回の記事ではアディダスのアディゼロプロのシューズレビューを行わせていただきます。
かねてよりカーボンプレート搭載シューズについては興味があり、履いてみたいなと思っていたところ、好みのカラーリングのアディゼロプロがセール価格となっていたので、購入することにしました。
アディゼロ(Adizero)と言えば、アディダスにおいて軽量性や、着用者の競技スピードを高めることにフォーカスしたプロダクト群のことを指しています。ランニングシューズに特化したシリーズと思われがちですが、実はその製品の幅は広く、過去には野球、テニス、サッカー、バスケ等の競技用シューズに加え、競泳用の水着までもがラインナップに取り揃えられていました。
そんなアディゼロシリーズから2020年春に発売されたアディゼロプロは、アディダス初のカーボンプレート搭載ランニングシューズとして市場に投入されました。さぞ、先駆者であるナイキのヴェイパーフライシリーズを意識したシューズなのだろうと思いきや、どうやらそうではないというのがこのシューズを履かれた多くの方の感想のようです。
一体どんなシューズなのか、私なりに解説していこうと思います。
(個人的な2021年No1シューズ、NewbalanceのFuelCell Rebel V2のレビューについてはこちらからどうぞ)
ADIZERO PRO誕生の背景
ナイキ一強時代に突入
2017年に登場したナイキのヴェイパーフライシリーズは、ランニングシューズ市場にカーボンプレート搭載厚底シューズ旋風を巻き起こしました。同シリーズを着用した世界中の契約ランナーたちが次々と優勝、新記録を樹立したことにより、他メーカーからナイキに乗り換える選手が続出しました。
そのマーケティング効果は絶大で、トップ選手着用モデルの市販バージョンである、ズームヴェイパーフライ 4%が発売された当時は、あまりの人気に購入者抽選販売が行われました。
かつてのアディダス、少なくとも2015年~2018年は、同社のランニングシューズを着用した青山学院大学が箱根駅伝を4連覇するなど、ある程度の市場シェアはあったように思います。
しかし、翌年2019年、同大学はヴェイパーフライシリーズを履く他大学に敗北を喫しています。そして、2020年からは青山学院大学もまた、他の多くの箱根出場校と同じく、他メーカーとの契約下にありながら、レース時はナイキのカーボンプレート搭載シューズを履くようになりました。
満を持して登場したAdidas初のカーボンプレート搭載ランニングシューズ
ナイキのヴェイパーフライシリーズ発表の3年後となる2020年春、ナイキに次いで、業界2番手のアディダスから満を持して登場した同社初のカーボンプレート搭載ランニングシューズが、アディゼロプロです。
アディゼロプロは世界のエリートランナーのフィードバックを得て開発され、同社最速の靴をつくることに主眼を置かれた、当時の同社の最上位モデルとして発表されています。シューズの木型には日本人シューズクリエイターである大森敏明氏監修のものを採用。大森氏については同社の公式ページにおいても語られています。
実際のところADIZERO PROはどんなシューズなのか
どうやらVaporflyとはちょっと違うらしい
アディダス初のカーボンプレート搭載ランニングシューズということで、きっとナイキ一強時代に一石を投じる製品なのかと思いきや、そうではないということがいくつかのシューズレビュアーのYoutubeチャンネルにて語られていました。
確かに、厚底のナイキのヴェイパーフライに比べるとソールは薄く、シューズの重量(片足230g/27.0cm)はエリートランナーのレース用シューズと呼ぶには少々重たいです。
アディダスは、アディゼロプロの発表と同時期に、アディゼロ ”アディオス” プロというモデルを発表しています。
上の動画でKofuzi氏も触れているように、所謂、マラソンスーパーシューズのカテゴリに入るのは”アディオス”の方であり、アディゼロプロをヴェイパーフライと対抗馬という認識で着用した方にとってはその期待に応えるものではない、ということのようです。
しなやかな”Carbitex”カーボンプレート
ミッドソールの大部分を軽量で反発性に優れるライトストライクを使用し、地面側に近い位置、およびヒール部にはBoostフォームが搭載されています。
トップ選手に多いフォア~ミッド着地だけでなく、ヒール着地のランナーも意識しているように見受けられますね。
インソールの真下には、Carbitexカーボンプレートが搭載されています。
これまで店頭で手に取ったきたカーボンプレート搭載シューズは前足部を曲げようとしてもその硬さからなかなか曲げることが難しかったのですが、アディゼロプロでは比較的簡単に曲がる印象を受けました。
ちなみに、Carbitexというのはカーボンファイバーに特化した加工技術を持つアメリカの化学素材メーカーの企業名でもあります。アディダスの他にも、BurtonやDCのスノーボードブーツメーカーや、SCOTT等のサイクリングシューズメーカーにもCarbitexの技術が採用されているようです。
Carbitex社の詳細については、こちらの外部記事にも記載がありますので興味のある方はご覧になってみてください。
ミッドソールのドロップは、公式サイトによると8.5mm (ヒール: 28.5mm / 前足部: 20mm) だそう。
ソールの厚みはヴェイパーフライ4%のそれ (39mm / 29mm) と比べると薄く、流行りの厚底シューズとは異なるビジュアルです。
見るからに通気性の良いCELERMESHのアッパー
アッパーにはセラーメッシュと呼ばれる素材が使われています。2020年のアディゼロプロ発表時点で同社史上最薄のメッシュ素材でありながら、フルマラソンのゴールまでをサポートするロックダウン性能が備わっているのだとか。
材質の感触としては見た目以上にハリがあり、固めの素材感でした。
同じくナイロン系のメッシュ素材がアッパーに使われていた、NewbalanceのFuelCell Rebel V2では、合計走行距離が500kmを越えるかどうかというころにアッパーが裂け始めました。感覚値ではありますが、アディゼロプロについては、それよりは長持ちしてくれそうな印象です。
ADIZERO PROを履いて走ってみた!
ということで、走ってみました。
足裏に確かに感じるカーボンプレート
アディゼロプロは自分にとって初めてのカーボンプレート搭載シューズということで、その履き心地を楽しみにしていましたが、結論としては大きな驚きはなかったというのが正直なところです。
走り始めは普段よりも楽に足が出る感覚があり、これがカーボンプレート搭載シューズの効果なのかと感心しました。しかし、かつてナイキのカーボンプレート搭載シューズを取り巻いていた”反則級”と呼ばれるほどの推進力かと言われると、少々疑問が残ります。
また、ナイキのヴェイパーフライ4%については、分厚いミッドソールでカーボンプレートを挟む仕様である一方で、アディゼロプロではインソールのすぐ下にカーボンプレートが搭載されています。
そのためか、クッショニングとしては硬めな印象です。
アッパーは見た目通りの通気性とタイトなフィッティング
アッパーはザラリとしたナイロン系のアッパーの裏地にひし形の網目のパターンの別生地を配した2層構造。パキッと固めの素材感で足とシューズを一体化してくれます。
通気性も非常に高く、気温の低い日に走るとなかなか足が温まってきません。半面、夏場のワークアウトでは快適に走れそうです。
アディゼロプロの足入れはタイトな部類に入るかと思われます。
幅狭、甲低のデザインであることに加え、インソール下から巻き上がるようにしてアッパーに縫い付けられているシュータンもまた、その要因の一つとなっています。
今回選んだサイズはこれまで履いてきたナイキのペガサス37やニューバランスのフューエルセルレベルV2と同じく27.5cmを選びました。ただ、つま先部は非常にタイトなので、足幅がある方や甲高の方は試着することをお薦めします。
注意点:かかと部分のフィット感
アディゼロプロに対して私が感じた課題はヒール部分のフィット感です。
足形による部分なので、一概にダメということではないですが、少なくとも私の踵の形状には合わず、着用して数回は踵は痛みが出てしまい、着用後に別の靴を履いてもその痛みが出てしまうほどでした。
回数を重ねる毎にアッパーが足の形状に馴染んできたのか現在は傷みは感じなくなっていますが、それでもワークアウト中に踵が遊ぶ感覚はなくならないです。
まとめ: デイリートレーナ―には成り得ないストイックなシューズ
アディゼロプロに対する私の勝手なイメージは、「みんなが履けるカーボンプレート搭載シューズ」でした。
が、いざ着用してみるとそれはただの幻想だったということを思い知らされました。
確かにカーボンプレートにより少ないパワーで足を前に出すことのできる感覚はありました。
しかし、足のすぐ下に搭載されたカーボンファイバープレートと薄底のミッドソールのセットアップはこれまで私が履いてきたランニングシューズに比べて明らかに硬く、私にとっては快適に走ることが難しいシューズでした。
総合的に私には早かったか・・・というのが正直な感想です。
一方で、シューズの見た目や色使いについてはかなり気に入っており、今後も継続して履こうというモチベーションになっています。幸い、回を重ねる毎にその履き心地にも慣れてきたので、2~300kmほど走ってみたあとのレビューでは、また違った感想をお伝えできるのではないかと考えています。
旧モデル故のお求めやすい価格は魅力
2020年発売モデルということで、カラーリングによってはけっこうな割引がされており、買いやすい価格になっています。カーボンプレート搭載シューズというと各メーカー、20,000円を超える高価格帯になることが多い中、1万円台中盤で購入することができます。
悲しいかな、公式サイトの方でも比較的サイズが揃っているようですので、気になる方はご覧になってみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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